北条氏綱『五箇条の訓戒』

原文でお答えください。 背景 後北条氏2代当主であった北条氏綱は後北条氏の相模や武蔵における地位を確立し、下総や上総、駿河、甲斐の一部にまで影響をもたらした。第一次国府台合戦ののちに実質的に嫡男の氏康に家督を譲り、隠居する形となった。そうして氏綱は1541年5月に病に倒れ7月19日に死去してしまのだが、当時まだ氏康は20代半ばと若く、その器量を心配して1541年5月に氏康に対して五箇条の訓戒を伝えた。これは北条氏綱公御書置として知られている。
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nasubi
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Last updated: April 6, 2026
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意味
原文解答
大将から侍にいたるまで、義を大事にすること。たとえ義に違い、国を切り取ることができても、後世の恥辱を受けるであろう。
大将によらす、諸侍迄も、義を専に守るへし。義に違いては、たとひ一国二国切取たりといふ共、後代の耻辱いかゝ。已天運つきはて滅亡を致すとも、義理違へましきと心得なは、来世にうしろ指をさゝるゝ耻辱は在間敷候。従昔、天下をしろしめす上とても、一度者滅亡の期あり。人の命はわすかの間なれは、むさき心底、努々有へからす。古き物語を聞ても、義を守りての滅亡と義を捨ての栄花とは、天地各別にて候。大将の心底、慥於如斯者、諸侍義理を思はん。其上、無道の働にて利を得たる者、天罰終に遁れ難し。
侍から農民にいたるまで、全てに慈しむこと。人に捨てるようなものはいない。
侍中より地下人、百姓等に至迄、何も不便に可被存候。惣別、人に捨りたる者はこれなく候。器量、骨格、弁舌、才覚人にすくれて、然も又、道に達し、あつはれ能侍と見る処、思ひの外、武勇無調法之者あり。又、何事も不案内にて、人のゆるしたるうつけ者に、於武道者剛強の働する者、必ある事也。たとひ片輪なる者なり共、用ひ様にて重宝になる事多けれは、其外は、すたりたる者は一人もあるましき也。その者の役に立処を召遣、役にたゝさるうつけ者よと、見かきりはて候事は、大将の心には浅ましくせはき心なり。一国共持大将の下の者、善人、悪人如何程かあらん。うつけ者とても、罪科無之内には刑罰を加へ難し。侍中に我身は大将の御見限り被成候と存候得者、いさみの心なく、誠のうつけ者となりて、役にたゝす。大将はいかなる者をも不便に思召候と、諸人にあまねくしらせ度事也。皆皆役にたてんも立間敷も、大将の心にあり。上代とても賢人は稀なる者なれは、来世には猶以あるましき也。大将にも、十分の人にてなけれは、見あやまり、聞あやまり、いか程かあらん。たとえは、能一番興行するに、大夫に笛を吹かせ、鼓打に舞はせては、見物なりかたし。大夫に舞はせ、笛鼓それゝゝに申付なは、其人をもかへす、同役者にて能一番成就す。国持大将の侍を召遣候事、又如此候。罪科在之輩は、各別小身衆者可有用捨事歟。
驕らずへつらわず、その身の分限を守るをよしとすべし。
侍者、矯らす諂らはす、其身の分限を守をよしとす。たとへは、五百貫の分限にて千貫の真似をする者は、多分はこれ手苦労者なり。其故は、人の分限は、天よりふるにあらす、地より沸にあらす。知行損亡の事あり、軍役おほき年あり、火事に逢者あり、親類眷属多き者あり。此内、一色にても其身にふり来りなは、千貫の分限者、九百貫にも、八百貫にもならん。然るに、か様の者は、百姓に無理なる役儀を掛るか、商売之利潤か、町人を迷惑さするか、博奕上手にて勝とるか、如何様にも出所あるへき也。此者、出頭人に音物を遣し、能々手苦労を致すに付、家老も目かくれ、是こそ忠節人よと、ほむれは、大将も五百貫の所領にて千貫の侍を召遣候と、目見えよく成申候。左候得は、家中加様の風儀を大将は御数寄候とて、華麗を好み、何とそ大身のまねをせむとする故、借銀かさまり、内證次第につまり、町人、百姓をたおし、後は博奕を心によせ候。さもなき輩は、衣裳麁相なれは此度の出仕は如何。人馬小勢にて見苦敷けれは此度の御供は如何。大将の思召も傍輩の見聞も何とかと思へとも、町人、百姓をたおし候事も、商売の利潤も博奕の勝負も無調法なれは、是非なし。虚病を構へ不罷出候。左候得者、出仕の侍次第々々にすくなく、地下百姓も相応に華麗を好み、其上、侍中にたおされ、家を明、田畠を捨て、他国へにけ走り、残る百姓は、何事そあれかし、給人に思ひしらせんと、たくむ故、国中悉貧にして、大将の鉾先よはし。当時、上杉殿の家中の風儀如此候。能々心得らるへし。或は他人の財を請取、或は親類縁者すくなく、又、天然の福人もありときく。加様之輩は、五百貫にても六七百貫のまねはなるへき也。千貫の真似は手苦労なくては覚束なし。乍去、これ等も分限を守りたるよりはおとる也と、存せらるへし。貧なる者まねをせは、又々、件の風儀になるへけれは也。
意味
原文解答
倹約に勤めて重視すべし。
万事、倹約を守るへし。華麗を好む時は下民を貪らされは出る所なし。倹約を守る時は下民を痛めす、侍中より地下人、百姓迄も富貴也。国中富貴なる時は、大将の鉾先つよくして、合戦勝利疑ひなし。亡父入道殿は、小身より天性の福人と、世間に申候。さこそ天道の冥加にて可在候得共、第一は、倹約を守り、華麗を好み給はさる故也。惣別、侍ハ古風なるをよしとす。当世風を好は多分は是軽薄者也と、常々申させ給ぬ。
いつも勝利していると、驕りが生まれ、敵を侮ったり、不行儀なことがあるので注意すべし。
手際なる合戦にて夥敷勝利を得て後、驕の心出来し、敵を侮り、或は不行義なる事、必ある事也。可慎。散々如斯候而、滅亡の家、古より多し。此心、万事にわたるそ。勝て甲の緒をしめよ、といふ事忘れ給ふへからす。
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